浪曲師菊池政五郎は、熱演中に弥次った客と喧嘩をして、師匠東家雲太夫から破門されたのは大正二年九州でのことである。慕ってついてきたお袖と共に大阪に出てきた政五郎は、しかし、破門回状がついてまわり、どの舞台にも出られなかった。そして、第一次大戦が始まる頃、彼は浪曲師の夢を捨て、侠客になったのである。政五郎が身を預けた山根組は、清掃事業の利権をめぐって滝井組や石津、浦辺組と敵対していたが、たまたま、兄貴分源吉が滝井組の縄張りを荒した責任を負って、政五郎は滝井伊三郎のリンチを受ける破目になったが、しかし、政五郎の意地の強さに伊三郎は感心してしまった。そのことがあってから伊三郎は、政五郎が大正七年の米騒動で貧乏人に味方して獄に下った時、なにかと山根組に尽してくれたのだった。二年後、出所した政五郎は伊三郎と義兄弟の盃を交した。政五郎を迎えた山根組は、全国の一流の...
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