スラム街のドヤで一人の頑丈な体躯の得体の知れない男が、花札と酒に浸っていた。ギョロ松こと大松伝次郎であった。彼は血気盛んなため、ある傷害事件を起し、外科医の免状を剥奪された上、大病院を追われ、やむなく潜入してきたのであった。ある日決闘で撃たれたチンピラ、トラ松の弾丸摘出手術をした。それを機に、スラムの自治委員長ら三役の懇願により、花子とお松を看護婦にして、ニセ医者を開業することになった。ある夜バーでホステスお春にからまれ、閉口しての帰り彼は、麻薬王のピストル弾丸の摘出手術をやらされ、危く消されそうになった。怒った彼は元帥なる警官に麻薬王の居場所を教え逮捕させた。彼は釣りの最中元帥に、無免許臭いと疑われるが、対岸の胸を病む貧しい少女の話を聞くと、逆に「あんたが、いや国家があの人たちに何かしてやったかね」と、怒りを叩きつけた。そして彼は少女のために果物や卵をソッと置いてきた。彼はまたトラ松が恋人の時子と結婚するため、組と縁を切りたがって決闘に及んだことを知り、彼をそそのかした連中に鉄挙で制裁を加えた。また、時子が健気に養う父親の怠け病に気合を入れたりもした。かくしてスラムにも、ギョロ松らの働きで明かるさが見え始めた。ところが、トラ松が再び瀕死の傷を負ってかつぎ込まれた。しかしさすがのギョロ松も手がくだせない。彼は手術代二十万を稼ぐため、トラ松の決闘の相手の三次と花札を打ったが負け、窮した彼は腕つくで金をまき上げ、そして彼はトラ松を大病院に運び院長に託した。実は彼はこの院長の教え子であった。病院を出た彼は三次らチンピラ連中に囲まれたが、一人残らずのしてしまった。翌日彼は快方に向かい始めた少女を見舞って、そこを立去る決心を固めた。しかしその彼を元帥が待ち構えていた。
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