足立正生と同じく日大映画学科出身の沖島勲は、足立の誘いで若松プロの助監督となり、若松孝二を支えた。沖島の監督デビュー作となった本作は、間もなく結婚しようとする若い男女と、その両親や叔父夫婦が集まった山荘で起こる一夜の狂騒劇だ。最初こそブルジョワ家庭を思わせる上品な会話が展開するも、間もなくそれぞれが馬脚をあらわし、不条理な世界へと突入していく。やがて観客は少しずつ忍び寄る恐怖を感じ始めるだろう。スクリーンに穴がポッカリ開いてしまったかのように、ここで展開される物語が時空間に歪みが発生した世界の出来事に思えてしまう。終盤、童謡の「ぞうさん」が何故か唄い出され、そんな唄は存在しないのだと登場人物が叫んだ時、その恐怖は頂点に達する。我々の世界に限りなく近いが、微かに異なる世界が顔を見せているのではという疑念が確信に変わり始める。
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