夫の死をきっかけに婚家を追われたますは、子どもたちと無心に手毬を突いて遊ぶ良寛を見かけ、その温かい微笑みに目を奪われた。その後、ますは良寛の歌に感銘を受け、自分自身の生き方を見つめ直すために出家を決意する。当時、良寛は国上山にある国上寺のこじんまりした五合庵を定住の地としながら、立派な寺の住職になることを薦められても、「余分なものは何一ついらない」と全国を托鉢して歩いていた。行脚の途中、彼は自分の実家の没落ぶりを目の当たりにする。彼の家は越後の国出雲崎で代々名主をつとめ、幕府御用達金を扱う両替商の大店を営んでいた。嫡男であった良寛は、名主代理として罪人の処刑に立ち会ったり、理不尽なことを強いられる辛さに耐え兼ね、18歳で出家したのである。立ち去ろうとした良寛が泥棒と間違えられて村人に殴られているところへ、弟嫁のやすが通りかかった。久しぶりに対面した弟...
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