春海渚はレビューにあこがれて上京したものの、踊子にもなれず、劇場の案内係をしていたのに郷里の恋人弱木紋太にはスターになっているということにしていたが、あいにく紋太は渚のその晴れ姿を見ようと上京してきてしまった。スターの春海渚と尋ね歩いてもだれ一人知る者もいない。一方渚はスターのミッキイのファンから贈り物を届に部屋に入るが、目についた燕尾服に目が止まり、留守を幸い、衣裳を着込んで喜んでいた。ところへドアにノックがあり、驚いた渚は窓から外の手すりに逃げたが、シルクハットを風に飛ばされ、それを拾おうとした瞬間、よろめいた渚はそのまま気を失ってしまった。--照明も消えた舞台に、一人立つ渚は、影法師に望みをかなえてやろうと言われて、錦絵のような美しい長崎の故郷へ連れていかれた。渚の顔をみると歌声と共に、大衆が押し寄せ、渚は「ナーギイ」という花形にされてしまった。花馬車にのせられたナーギイは王子にされ、李花の姫と共に、ナーギイ歓迎会場に連れて行かれた。大勢の観衆に囲まれて、すっかり有頂天になった渚は、始めは驚いたが、そのうちに自分でもナーギイになりきってしまった。その会場へ紋太と李花の恋人、王龍が憤慨してやってきた。樹の上でそれを見ていた、陰智己と頓智己はすっかり喜んでその結果を見ようと、魔力で娘姿に化けて後をつけた。すっかり王子にまつり上られたナーギイは銀の靴を出して、シンデレラを探したが、その靴をはけたのは、貧しい娘と、李花だった。二人のシンデレラの出現にナーギイは迷ったが、よく見ると貧しい姿の娘は、同じ劇場に働いていた翠だった。翠は間違いでも起こらないうちに帰ってくれと耳に囁いたが、今は驕慢になった有頂天のナーギイは、反対に翠をつきのけて、李花をシンデレラ姫に決めてしまった。そこへ乗り込んできた紋太と王龍のために、ナーギイは正体を暴露され、大衆に追われて逃げ出さなければならなくなった。一心に逃げるナーギイは魔力によって南蛮山お化け寺に吸い込まれ、影法師の主獏々和尚のためにいつまでもナーギイにしておいて貰う約束で、だまされて影をとられてしまったのだ。渚は影の代償として再びナーギイになったつもりだったが、舞台の花形として踊り狂うナーギイの相手は、実は悪魔だったのである。ナーギイにはその悪魔の姿が、人気者のミッキイ、タッピイに見えるのだ。そこへ紋太と翠たちが駆けつけて、悪魔のもっとも嫌う、十字架を持って、獏々和尚の魔力を解いて、ナーギイをやっと元の姿に帰すことが出来たのである--。開幕のベルが鳴っている。渚は、手すりから落ちて実は気絶していたのだ。夢からさめた渚は、なつかしい紋太の姿を発見して、二人は熱い抱擁をするのだった。
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