これまでに失敗を繰り返して何度となく職を首となった二宮清十郎は、女房の君子に毎日のように罵しられるために、わずかな手荷物を持って故郷の山形を後にした。胸を弾ませての上京だったが、第一日目にして金を失くしてしまった。仕方なく上野の山をぶらついていると、数人のルンペンが接近して来て、地見屋の駒井鉄五郎、仲間から会長と慕われている遠藤大五郎らにルンペン社会に入ることを奬められた。清十郎は会長の人間味ある優しさに甘え、抵抗なく従った。そんなある日、清十郎は集団就職で上京したものの会社が倒産して途方に暮れている、同じ山形出身の白川秋子と知り合った。彼女に同情した清十郎は、咄嗟に靴問屋の住み込み倉庫番の職を探し、秋子と生活するようになった。しかし夢のような生活も束の間、ボヤを出して仕事は首になり、さらに会長の死が知らされた。もう、これ以上、世話にはなれないと、秋子が姿を消した。以来、清十郎は仕事を見付けては失敗し首になり、ヤケ酒を呑む毎日が続いた。一方、秋子は以前知り合った青年山田信介の紹介で仕事につき、二人は愛し合うようになっていた。その頃、清十郎もロウ人形館の仕事にありついた。そんなある日、秋子が清十郎に会いに来て、結婚したいと言った。自分への求婚と錯覚し、嬉しさのあまり踊り狂った清十郎だったが、やがて相手が自分でないと知った。清十郎は去って行く秋子を見送りながら、一人でステップを踏み続けるのだった。
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