長谷川伸の同名戯曲を「怪談お岩の亡霊」の加藤泰が脚色・監督した感動の名作。撮影は「若き日の次郎長 東海道のつむじ風」の坪井誠、音楽は「小さな花の物語」の木下忠司がそれぞれ担当した。流麗なカメラワークや長回し、的確なカッティングなど、加藤の職人芸が冴え渡る。番場の忠太郎を中村錦之助、その母を小暮実千代が演じた。 五歳のときに母親と生き別れになった番場の忠太郎は、母を求めて二十年間、博徒として旅を続けている。弟分の半次郎を逃がすために飯岡一家の喜八たちを斬った半次郎は、母を捜して江戸の町を歩き回るが、半次郎を追う飯岡一家の七五郎たちもまた江戸に姿を現していた。料亭の女主人おはまが江州にいたと聞いた忠太郎は、もしや生き別れの母親ではないかと彼女に会いに行くが「私の忠太郎は九つのとき流行病で死んだ」と告げられてしまうのだった。
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