昭和二十一年の夏、楢崎、大平、木原、東郷の四人が彼等の戦友で、比島で死んだ田口の未亡人勝子の家に一周忌のために集った。勝子には六歳の弘があった。その年の暮に雑誌社に務めていた楢崎は勝子と結婚した。楢崎、勝子、弘の三人の団欒は楢崎の戦友の吉野が和歌山の田舎から妻子四人をつれて転がりこんできたことから破れてしまった。そのうちに楢崎は脚の怪我がもとで失職してしまい、勝子は大平の世話で丸の内の劇場の売店に務めることになった。大学を出て新聞社に務めるようになった大平は勝子をひそかに恋するようになった。二十五年の秋に戦友達はまた会合した。武内は特需ブームで巨万の富をもつようになっていた。武内は家に戦災孤児の朝子を引きとっていた。武内の紹介で楢崎は倉庫会社に職を見つけることが出来た。吉野も武内の世話で仕事を得、楢崎の家を出て行った。ある夜大平は勝子に愛情を告白した...
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