サラリーマンや学生、作業員の憩の場所「たそがれ酒場」。専属ピアニスト江藤釿也の伴奏で健一が唄っている。江藤は三十余年前歌劇界の花形だったが、愛弟子と妻が彼にそむいたので刃傷沙汰を起し、楽壇から姿を消した人だった。酒場で先生と呼ばれる梅田茂一郎はかつて戦記物で名を成した画伯だが、今はパチンコでかせいで暮している。通称小判鮫の汲島鉄夫は何時も梅田に焼酎を飲ませてもらう。競輪で穴を当てて得意になっている岐部と元隊長鬼塚大佐は、傍の卓子でサルトルを論じている大学の講師と学生達が気に入らない。地廻りの愚連隊森本は酒場に働く娘野口ユキのことで恋人鱒見とわたりをつけに来るが、鱒見にナイフで強迫されユキから手を引くと誓う。鱒見は大阪へ高飛びするからと、ユキへの伝言を梅田に頼んで立去る。鱒見の後を追おうとしたユキは、日雇い作業員をしている母親が怪我をしたと知らせに来た...
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