雁(かりがね)の伊太郎は旅の途中、医師の卜斎、その娘おせつと知り合った。口笛のうまい伊太郎は名代のかん癪持ちである。三人が茶屋で休んでいるとき、雲助たちが旅姿のとみ・みよ母娘をゆすろうとした。伊太郎は彼女らを救おうとしたが、雲助たちに脇差をとられ、無腰で弱りはてた。卜斎は雲助らを叱りつけ、彼を救った。なにせ、卜斎は雲助に薬代の貸しがあったから、強いのである。伊太郎は渡し舟の中で乱暴役人二人を川へ投げこんで、強いところを見せたが、卜斎は「匹夫の勇じゃ」と軽くあしらうのである。この爺、そうとうな頑固ものと見えた。彼らと別れた伊太郎は“つたや”に泊ったが、女の泣き声が聞こえた。おみよ母娘だった。みよは身売りしてきたのだ。この土地の顔役、温泉場の経営者黒磯の五兵衛はみよの身売り代五十両を母のとよから奪った。伊太郎は伜の美代吉と名乗って、五兵衛のもとでタンカを切り、金を取り返してやる。五兵衛一味は伊太郎を夜道で襲い、彼の左肩を射抜いた。追いつめられ、彼は崖下へ落ちた。伊太郎が卜斎の家の裏口に倒れているのを発見すると、おせつは献身的に看護した。するうち、彼女は彼を慕い始めたのである。が、彼女には呉服屋の伜・清七という許婚がいた。だから伊太郎はある夜ひそかに旅立った。泣き崩れるおせつを残したまま。が、彼は越後の帰りにきっと寄ると云った。--夏が来て、つたやの女お浜は過労で寝こんでしまった。卜斎の注意を親分の五兵衛は鼻であしらう。代官所に訴え出ても、代官は五兵衛とグルだった。お浜は死に、卜斎は五兵衛や代官の悪業の数々を江戸へ訴状にして送った。五兵衛らは卜斎の家で乱暴を働き、清七をだましておせつを代官屋敷へ連れこもうとした。そのとき口笛が聞こえ、伊太郎が現れた。彼ほおせつを救い、卜斎を救った。更に代官屋敷へ乗りこもうとした。途中を、一味が待ち伏せていたが、--結局、悪人は滅びるのである。--伊太郎は口笛と共にまた旅に出た。そのあとを、卜斎にはげまされたおせつが懸命に追っていった。
影视行业信息《免责声明》I 违法和不良信息举报电话:4006018900