白百合観光の女社長花園ゆめみは、極東観光の大黒社長から“鹿児島の旅館薩摩荘が、契約を極東に切替えた”からそのつもりでと聞かされて、調査のため鹿児島に向った。女中志顔を装って薩摩荘を訪れたゆめみは、週刊タイムリーの記者立神修平と、時を同じくして薩摩荘に住むことになった。薩摩荘の娘咲子から、今の若主人信太郎は、亡き姉光子が東京に遺した恋人だが、自分も信太郎に想いを寄せていると聞いたゆめみは、彼が唄が好きなのにことよせて近づき、咲子との結婚をすすめた。一方、修平は、信太郎がもと新潟の場末を流していた艶歌師で、薩摩荘を乗っとろうとしているという情報を掴んで密かに探索を進めていた。しかし彼が来てからの薩摩荘の経営は面目一新の感があり、旅館業組合の理事就任を望む声も高くなっているのが不思議だった。おはら祭が近づいた頃、薩摩荘を訪れた大黒は、離れに信太郎を伴って、死んだ光子の恋人はこの俺だと写真をみせつけるのだった。押入にひそんでいたゆめみと、風呂番健太の機転で、大黒こそ光子を捨てた男であることが判明し、事件は落着した。一人になりたいと考えた信太郎は薩摩荘を後にした。熊本の水前寺公園で信太郎を見たという知らせをきいて、ゆめみたちはさらに灯籠祭に賑わう山鹿温泉へ向った。薩摩荘の特集記事に失敗した修平も山鹿に来ていた。群衆の中で信太郎を囲んで四人は無事を喜び合った。そして信太郎は薩摩荘の養子に、修平は白百合観光の養子として、ゆめみと結ばれることになった。おはら祭の中を進む花電車の上に、唄うゆめみと信太郎、そして咲子、修平の姿が見られた。やがて唄声が市民の大合唱となって桜島にこだましていった。
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