大岡忠相の一子・求次郎が早くも五歳になり、袴着の祝いを迎えた秋。 「大岡さまが町奉行を辞める?!」…江戸市中に噂が飛び交う。真相は、忠相に武蔵野の新田開発をせよと吉宗から新たな命が下ったのだ。農政は素人ながら潔く引き受けた忠相、浪人姿に身をやつし、同心片瀬と岡っ引き勘太を供に、武蔵野検分の忍び旅に赴いた。その旅先で、偏屈だが筋の通った名主の川野平左衛門を見出すが…。 そのころ江戸では、悪戯ざかりの求次郎が行方不明になり、留守を守る雪絵は気丈に振舞いつつも心配で胸が張り裂けそうな時を過ごす。求次郎を生き別れの我が子と間違え連れ去った哀れな女おこん――だがその情夫が、忠相によって獄門台に送られた兇賊一味の残党だったことから、事態は思わぬ方向へと動き出す――。
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